耐火被覆工事とは? 目的や必要性、ルールを解説!

皆さん、はじめまして。東京都江戸川区を拠点に耐火被覆工事を手掛けている實川耐工です。


今回からブログを更新し、弊社の事業内容や採用情報を発信していきたいと思います。


初回となる今回のテーマは、弊社のメイン事業である「耐火被覆工事」です。聞きなれない工事かもしれませんが、耐火被覆は建物を火災から守る上で非常に重要な役割を果たしています。主に鉄骨造の建物において、法令で定められた耐火性能を満たす上でも必須であり、正しく施工しなければならないのです。ここでは、耐火被覆の基礎知識をご紹介します。




■耐火被覆とは?



耐火被覆とは、建物に十分な耐火性能を持たせるために、耐火性・断熱性に優れる素材で構造部材(柱や梁など)を覆うことです。そして耐火性能とは「火災が発生してから、建物の中にいる人が逃げ切るまでに建物が倒壊しない性能」を指します。つまり耐火被覆の目的は、一言でいうと「建物の倒壊防止」です。


ビルやマンションなどの火災はしばしば発生していますが、全体が炎に包まれ焼けたとしても、「倒壊」や「全壊」にまで至るケースはそうありません。これは防火被覆によって十分な耐火性能が与えられ、建物の骨組みを維持できているからです。


建物の設計図や特記仕様書などにも、柱や梁などに「1時間耐火」や「2時間耐火」といった必要な耐火性能が記載されています。部位によって求められる耐火性能は異なるため、他にも「30分耐火」や「3時間耐火」などの種類があり、法令で定められています。




■鉄骨造は熱に弱い! 耐火被覆は必須です



耐火被覆が必要かどうかは、建物の構造体の材質によって変わってきます。主に耐火被覆工事が必要になるのは「鉄骨造」の建物です。こう聞くと「鉄骨は金属だから火災に強いのでは?」と疑問に思う方もいるでしょう。それは大きな誤解です。


鉄骨造は圧力に強く頑丈なのに加え、鉄骨のしなやかさが揺れを吸収するため、揺れやすい代わりに地震の衝撃を抑えてくれます。耐震性能は優れているといえるでしょう。しかし、実は鉄骨造りは「熱に弱い」のです。


鉄骨は温度が300℃~500℃に達すると急激に強度が低下し、軟化する性質があります。火災が発生した建物の温度は900℃~1,000℃以上にもなるため、鉄骨はグニャッと曲がってしまうほど柔らかくなります。つまり、火災によって長時間高温にさらされると、鉄骨造の建物は強度を失い倒壊するおそれがあるのです。


一方、木材は鉄骨に比べて燃えやすいものの熱伝導率が低く、表面が燃えても内部まで火が通るのには時間がかかります。そのため、火災が発生しても急激に強度が低下することはなく、構造体が長時間強度を維持できるのです。逃げるための時間を稼ぐという点では、木材の方が優れているといえます。


このような鉄骨造りの弱点を補うためにも、耐火被覆が必要なのです。最近は技術の進歩により、耐火性能を備えた鉄骨も登場していますが、古い建物は基本的に後から耐火被覆を施しており、定期的なメンテナンスが欠かせません。新しい建物でも、耐火被覆が必要なケースはまだまだ多いのが実情です。利用者の安全を確保するためにも、適切に工事を行う必要があります。


なお、鉄筋コンクリート造やれんが造の建物は、構造体そのものが耐火構造なので、耐火被覆工事を行う必要はありません。耐火被覆工事の詳しいルールについては、次の項目で解説します。




■耐火被覆は法令を守るためにも必要です!



耐火被覆は、火災発生時の被害を最小限に抑えるために必要不可欠な工事です。日本は地震の多い国でもあることから、特に都市部では地震発生時の火災リスクが高く、建物は十分な防火・耐火性能を備えていなければなりません。そのため、耐火被覆に関するルールは、建築基準法などの法令によって定められています。


ルールを守る上で最初に確認すべきなのは、建物を建設する地域です。建物が密集する地域は、火災発生時に延焼するリスクが高いため、「防火地域」もしくは「準防火地域」に指定されています。一般的には主要駅周辺や繁華街、ビルが立ち並ぶ場所が「防火地域」、その周辺が「準防火地域」に指定される傾向があります。


このような地域の建物は、火災発生時の被害拡大を抑えられるよう、十分な耐火性能を備えていなければなりません。そこで次に確認すべきなのが、建物の構造や耐火性能に関するルールです。


まず、防火地域内に建物を建てる際、延べ床面積が100㎡を超える場合は「耐火建築物」にする必要があります。耐火建築物とは、火災の延焼拡大を防ぐための機能を備えた建築物のことです。鉄筋コンクリート造のような耐火性・断熱性に優れた建物や、耐火被覆を施した鉄骨造の建物が該当します。


また、延べ床面積100㎡以下の建物の場合は、1・2階を耐火建築物または「準耐火建築物」、3階以上は耐火建築物にする必要があります。準耐火建築物とは、建物の主要構造部が耐火建築物に準じた耐火性能を持つ建物のことです。耐火建築物に不適格だった建材でも、耐火被覆によって準耐火建築物の基準をクリアできる場合があります。


さらに、準防火地域内に建物を建てる時は、4階建て以上もしくは延べ床面積が1500㎡を超える場合だと、耐火建築物にするよう規定されています。3階建て以上もしくは延べ床面積500㎡~1500㎡の建物は、準耐火建築物かそれに準じた建物にしなければなりません。


その他、映画館や病院、ホテル、学校、百貨店といった「特殊建築物」は、一定の条件を満たしていると地域に関係なく(準)耐火建築物にしなければならないケースがあります。実際のルールは非常に細かく設定されているため、建物を建てる時は必ず確認し、必要に応じて耐火被覆工事を行うことが大切です。




■耐火被覆の材料と工法



耐火被覆に用いる材料は、当然ながら火や熱に強い「不燃材料」である必要があります(一部例外あり)。鉱物を繊維状に加工した「ロックウール」やセメント系材料、そしてケイ酸カルシウム板などを使うのが一般的です。


また、工法にもいくつかの種類があります。最もメジャーなのは、ロックウールとセメントを混ぜ合わせ、柱や梁に直接吹き付けて固める「吹き付け工法」です。コストが安く短時間で施工できる一方、美観性はあまりよくないという欠点があります。ただ、構造体は天井裏や壁内に隠れることが多いので、実際はそれほど気になりません。


その他、シート上のロックウールを巻きつける「巻き付け工法」、ケイ酸カルシウムの板で柱や梁の周りを覆う「成形板張り工法」、耐火塗料を鉄骨に直接塗りつける「耐火塗料工法」などがあります。いずれもメリットとデメリットがあるため、特徴をよく理解した上で、予算や現場の環境に合ったものを選ぶことが大切です。


なお、人体に有害な物質として知られているアスベスト(石綿)は、かつて耐火被覆の材料として使われていたことがあります。アスベストの有害性が判明してからは使用が禁止され、代わりにロックウールが使われるようになりました。古い建物には今でもアスベストが使われている場合があるため、リフォーム工事などの際には撤去が必要です。




■まとめ



耐火被覆は、建物に十分な耐火性能を与えるために必要不可欠な工事です。適切な耐火被覆が施されていれば、たとえ火災が発生しても建物が長時間倒壊せず、中にいる人が安全に避難することができます。火災はいつどこで発生するかわからず、日本は地震による火災リスクも高い国です。いざという時に居住者・利用者の命を守れるよう、耐火被覆工事を適切に行いましょう。


實川耐工は、耐火被覆工事の専門業者です。迅速・柔軟・丁寧な施工により、多くのお客様からの支持をいただいてきました。圧倒的なスピードと仕上がりの美しさ、臨機応変な対応力により、幅広いご要望に対応できるのが強みです。新築はもちろん改修工事にも対応し、施工後のメンテナンスもしっかりと行います。耐火被覆工事をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。