皆さん、こんにちは。
東京都江戸川区を拠点に耐火被覆工事を手がけている、株式会社實川耐工です。
「テナントを退去する際、一体どこまで原状回復すればいいのだろう?」
「オーナーから高額な見積もりが届いたらどうしよう…」
テナントの退去を控えた経営者の方であれば、誰もが一度は原状回復に関する費用や工事範囲について、このような不安を抱えるのではないでしょうか。
アパートの引越しと同じような感覚で考えていると、後から数百万単位の思わぬ費用が発生するケースも珍しくありません。テナントの原状回復には、居住用物件とは全く異なる、事業用物件ならではのルールとリスクが存在するのです。
この記事では、原状回復の正しい範囲から費用相場、そしてプロだけが知る”隠れたリスク”と、それを回避する具体的な方法まで解説します。
■テナントの原状回復は居住用と違う!テナントの原状回復はどこまで行う?

まず最も重要なことは、テナント(事業用物件)の原状回復は、私たちが慣れ親しんでいるアパートやマンション(居住用物件)のルールとは全く異なるという点です。この認識の違いが、トラブルの第一歩となります。
・国交省ガイドラインは適用外!「契約書」が絶対的なルール
大前提として、アパートなど居住用物件でよく聞く国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、テナント物件には原則適用されません。
居住用物件であれば、このガイドラインを基に「通常の使用による壁紙の日焼けや家具の設置跡はオーナー負担」といった共通認識があります。しかし、事業用であるテナント物件の原状回復における全てのルールは、あなたがサインした『賃貸借契約書』に書かれています。契約書に記載された内容が、法律よりも優先される絶対的なルールとなるのです。
・「通常損耗・経年劣化」もテナント負担?特約の重要性
居住用物件では「普通に使っていて古くなった部分(通常損耗・経年劣化)」の修繕費用は、原則としてオーナー(貸主)が負担します。
しかし、テナント物件ではこの常識が通用しないケースがほとんどです。飲食店、オフィス、物販店など、業種や業態によって内装や設備の使い方は千差万別で、劣化の度合いも大きく異なります。そのため、契約書の中に「通常損耗・経年劣化を含め、借主(テナント)の負担で原状回復を行う」という趣旨の特約が盛り込まれていることが一般的です。この特約がある限り、たとえ通常の使用による損耗であっても、その修繕費用はテナント側の負担となってしまいます。
・知っておきたい2020年改正民法と「理不尽な特約」の考え方
少し専門的な話になりますが、2020年4月に施行された改正民法では、賃借人(テナント)は通常損耗や経年劣化について原状回復義務を負わないことが明記されました。
しかし、これはあくまで法律の原則論であり、前述の通り、契約書に「特約」があればそちらが優先されるのが実情です。したがって、「法律で決まったから大丈夫」と安易に考えるのは危険です。
ただし、あまりにも借主にとって一方的に不利な内容や、社会通念上「理不尽」と判断されるような特約は、無効と判断される可能性もあります。契約内容に疑問がある場合は、安易に合意せず、専門家に相談する余地があることも覚えておきましょう。
■気になる原状回復の費用相場は?

テナントの原状回復費用は、物件の広さ、業態、そして契約内容によって大きく変動します。ここでは、あくまで一般的な目安としての費用相場をご紹介します。
<業態別の費用相場(坪単価)>
・オフィス:坪単価 2万円~10万円
内装が比較的シンプルなため、費用は抑えめになる傾向があります。ただし、入居時に設置したパーテーションや造作物の量によって変動します。
・飲食店・美容室など:坪単価 5万円~15万円
厨房設備や給排水設備、ガス、排煙ダクト、シャンプー台など、専門的な設備の撤去・清掃が必要になるため、費用は高額になりがちです。
※上記の相場は、あくまで内装の解体・修繕費用です。後述する耐火被覆の補修やアスベスト対策が必要な場合、その調査・施工費用は全くの別物として、状況に応じて別途発生します。
<費用が高額になりやすいケース>
以下のケースに該当する場合、上記の相場を大幅に超える可能性があります。
・スケルトン戻しが指定されている場合
「スケルトン」とは、内装が何もない、建物の躯体(コンクリート)がむき出しの状態を指します。契約書でこの状態に戻すことが義務付けられている場合、内装を全て解体・撤去する必要があるため、工事費用は高額になります。
・専用設備(厨房、給排水など)が多い場合
特に飲食店などで、重量のある厨房設備や複雑な給排水管、空調・排気ダクトなどを設置した場合、その撤去・処分費用が大きくかかります。
・耐火被覆の補修やアスベスト除去が必要になった場合
これらは、一般的な内装工事の見積もりには含まれていない「隠れたリスク」です。もし専門家による調査でこれらの問題が発覚した場合、工事費用が跳ね上がることも珍しくありません。
■テナントの現状回復における注意点

ここからは、多くの人が見落としがちで、高額請求トラブルの元凶となる「隠れたリスク」について、専門家の視点から解説します。
・見落とし厳禁!「耐火被覆」の損傷
「耐火被覆(たいかひふく)」という言葉を初めて聞く方も多いかもしれません。これは、万が一の火災の際に、建物の骨格である鉄骨が熱で溶けて強度が落ち、倒壊するのを防ぐために施工される、非常に重要な断熱材です。ショッピングセンターの吹き抜けなどで、鉄骨の梁に綿状のものが吹き付けられているのを見たことがあるかもしれませんが、それが耐火被覆です。
この「建物の命綱」とも言える耐火被覆ですが、テナントが入居中に行った内装工事が原因で、知らず知らずのうちに傷つけてしまうケースが後を絶ちません。
• パーテーション設置のための下地工事
• 空調ダクトや換気扇の増設工事
• 天井裏での電気・LAN配線工事
こうした工事の際に、作業員が耐火被覆を剥がしてしまったり、損傷させたりすることがあるのです。
この責任の所在については、「経年劣化であればオーナー負担、テナント工事による損傷であればテナント負担」が原則です。しかし、その原因がいつ、何によるものなのかを特定するには、専門家による詳細な診断が不可欠となります。
・最も深刻な問題「アスベスト」の出現
そして、最も深刻かつ最悪の事態が「アスベスト(石綿)」の問題です。 特に2006年以前に建てられた古いビルでは、耐火被覆材や天井材、床材などに、発がん性物質であるアスベストが使用されている可能性があります。
もし、原状回復の解体工事中にアスベストの存在が発覚した場合、工事は完全にストップします。
アスベストの除去は、専門の資格を持つ業者が、厳重な管理体制のもとで特殊な工法を用いて行わなければなりません。そのため、他の全ての工事を中断し、除去費用として数百万円単位の追加費用と、数ヶ月単位の大幅な工期遅延が発生する可能性があります。
これは「知らなかった」では済まされない法的な義務であり、ビルオーナー、テナント双方にとって面倒な事態と言えるでしょう。
》テナントの原状回復でよくあるトラブルは?対策と耐火被覆とアスベストのリスクを紹介!
》耐火被覆工事とは? 目的や必要性、ルールを解説!
》アスベスト事前調査をしないとどうなる?違反時の罰則から実例・不要なケースまで徹底解説
■トラブルを未然に防ぐための対策
では、こうした深刻なトラブルを避けるために、私たちは何をすべきなのでしょうか。最低限、以下の3つの対策を徹底することが重要です。
・徹底的な契約書確認
入居時に行うべき最も重要な対策です。原状回復に関する条項(特に特約)を隅々まで読み込み、少しでも不明な点があれば、必ず貸主側に確認し、可能であれば書面で回答をもらいましょう。「どこまでを」「どのような状態に」戻す必要があるのか、貸主と借主の間で認識を完全に一致させることが、将来のトラブルを防ぐ最大の鍵となります。
・物件状態の記録
入居時の物件の状態を、日付のわかる形で写真や動画に詳細に記録しておきましょう。壁、床、天井、設備など、あらゆる箇所の状態を記録し、可能であれば貸主側と共有・確認しておくことで、「入居前からあった傷だ」と主張するための客観的な証拠となります。
・専門業者への相談
原状回復の見積もりが高額だと感じた場合や、契約内容に不安がある場合は、早めに専門業者へ相談することをお勧めします。特に、耐火被覆やアスベストといった隠れたリスクについては、専門家でなければ調査・判断することさえできません。オーナー指定の業者だけでなく、複数の業者から見積もり(相見積もり)を取ることも、費用の適正化に繋がります。
■まとめ

本記事では、テナントの原状回復について、その範囲や費用、そしてトラブル回避策を解説しました。
テナントの原状回復は、居住用物件の常識が通用せず、全てのルールは「契約書」に定められているのが大原則です。そして最も注意すべきは、壁や床といった目に見える部分だけではありません。専門家でなければ判断できない「耐火被覆」や「アスベスト」といった、目に見えない部分にこそ、高額請求に繋がりかねない深刻なトラブルのリスクが潜んでいるのです。
原状回復は、退去する側にとって大きな金銭的負担となる最後の義務です。トラブルを避け、適正な費用で円満に退去するために、ぜひこの記事で得た知識をお役立てください。
■耐火被覆工事でお困りなら、株式会社實川耐工にお任せください。

弊社、株式会社實川耐工は、耐火被覆工事を専門とするプロフェッショナル集団です。
原状回復の際に、「耐火被覆の損傷を指摘された」「アスベストの調査が必要かもしれない」といったお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
専門家の視点から、現状の調査・診断、最適な補修・対策工事のご提案、そして適正な費用のお見積もりまで、ワンストップでサポートいたします。
「見積もりの内容が適正か見てほしい」「そもそも自分のテナントにリスクがあるのか知りたい」といったご相談だけでも構いません。専門家の視点から、お客様にとって最適な解決策をご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。
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