皆さん、こんにちは。
東京都江戸川区を拠点に耐火被覆工事を手がけている、株式会社實川耐工です。
テナントの退去に伴う原状回復工事は、ビルオーナー様や不動産管理会社様にとって避けては通れない重要業務です。しかし、その過程では「費用」「工事範囲」「工期」などをめぐり、予期せぬトラブルが発生することも少なくありません。
この記事では、テナントの原状回復で起こりがちなトラブル事例を挙げるとともに、その根本的な原因となりうる、専門家でなければ見抜けない「建物の構造的なリスク」について解説します。大切な資産を守り、円滑なビル経営を実現するための一助となれば幸いです。
■テナントの原状回復でよくあるトラブル

まずは、多くのオーナー様や管理会社様が経験する、代表的なトラブル事例を見ていきましょう。
トラブル①:費用に関する問題
最も多いトラブルの一つが、費用に関する問題です。契約内容や工事範囲の認識が曖昧なまま話を進めてしまった結果、後から想定を大幅に超える高額な費用を請求されたり、提示された見積もりの内訳が不透明で妥当性が判断できないといった事態に陥るケースが後を絶ちません。
トラブル②:工事範囲と責任の所在に関する問題
次に、工事の範囲や責任の所在をめぐるトラブルも頻繁に発生します。特に事業用物件の賃貸借契約では、経年劣化や通常損耗も借主の負担とする特約が多いため、どこまでが借主の責任範囲なのかという解釈をめぐって貸主と借主が対立し、負担割合で意見が食い違うケースは少なくありません。
トラブル③:工期の遅延に関する問題
工事中に予期せぬ問題が発覚し、計画外の追加工事によってスケジュールが大幅に遅延することも深刻なトラブルです。この工期の遅れは、次期テナントの入居時期に直接影響を及ぼし、得られるはずだった賃料収入を失うなど、事業機会の損失に直結してしまいます。
そして、これらの表面的なトラブルの根本的な原因は、貸主と借主の認識のズレだけではありません。多くの場合、その背景には専門家でなければ見抜けない『建物の構造的な問題』が隠されているのです。
■原状回復工事に潜む、見落としがちなリスク

壁紙や床の張り替えといった目に見える部分だけでなく、普段は目に触れない天井裏や鉄骨部分にこそ、トラブルの火種は潜んでいます。
リスク①:テナント入退去に伴う「耐火被覆」の劣化・損傷
耐火被覆とは、鉄骨造の建物において、柱や梁といった骨組みに施工される被覆材のことです。火災の熱で鉄骨が歪み、建物が倒壊するのを防ぐ非常に重要な役割を担っており、建築基準法によって施工が義務付けられています。
この重要な耐火被覆ですが、テナントが入居中に行った内装工事(空調ダクトの設置、間仕切り壁の造作、配線工事など)によって、知らず知らずのうちに剥がされたり、傷つけられたりしているケースが多々あります。
この損傷を放置すると、法令不適合状態による是正命令のリスクや、火災時の安全性低下、ひいては建物全体の資産価値の下落に直結する深刻な事態を招きかねません。
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リスク②:既存建築物に潜む「アスベスト」の問題
アスベスト(石綿)は、かつてその耐火性から、耐火被覆材(吹付アスベスト)としても広く使用されていました。しかし現在では、人体への深刻な健康被害が明らかになり、その扱いは法律で厳しく規制されています。
特に重要なのが、2022年4月から石綿障害予防規則が改正され、建物の解体・改修工事を行う際には、アスベストの有無を事前に調査し、その結果を行政に報告することが完全に義務化された点です。これは工事の発注者であるビルオーナー様の責任となります。
もし事前調査を怠ったまま工事に着手し、途中でアスベストが発見された場合、工事は即時中断となり、罰則の適用や計画の大幅な変更など、事業に甚大な影響が及びます。
》解体工事の前に知りたい!アスベストが使用されている建物の年代を判定する方法とは?
■計画外の工事が引き起こす事業への影響

「耐火被覆」や「アスベスト」の問題は、具体的にどのような事業リスクに繋がるのでしょうか。ここでは、実際に起こりうる事例を2つご紹介します。
事例1:「解体したらアスベストが…」工事中断による工期遅延と数百万の追加費用
あるビルで、テナント退去後の原状回復工事が始まりました。事前のアスベスト調査を行わずに内装の解体を進めたところ、天井裏の鉄骨から、想定外の吹付アスベストが発見されたのです。
その瞬間、全ての工事は中断を余儀なくされます。オーナーは専門業者の手配、行政への届出、近隣への説明対応に奔走。結果として、アスベスト除去工事のために数百万円もの追加費用が発生しただけでなく、工期も数ヶ月単位で大幅に遅延する事態に。すでに契約が決まっていた次のテナントの入居は白紙となり、多大な機会損失へと繋がってしまいました。
事例2:「スケルトン戻し」で耐火被覆の損傷が発覚。貸主・借主間のトラブルに発展
別の店舗物件では、契約に基づき、内装をすべて解体して建物の躯体だけの状態に戻す「スケルトン戻し」が進められていました。すると、テナントが設置した空調設備の裏側で、梁の耐火被覆が広範囲にわたって剥がされているという、憂慮すべき事実が発覚します。
オーナーは退去したテナントに補修費用を請求しましたが、テナント側は「経年劣化であり、自社に責任はない」と主張。費用負担をめぐって両者の対立は深刻化し、法的な紛争に発展しました。その間、物件は補修もできず、新たなテナント募集もかけられない状態が続き、最終的に大きな損失を被ることになったのです。
■トラブルを回避し、適正な原状回復工事を行うための対策

このような深刻な事態を避けるためには、どうすればよいのでしょうか。重要なのは、問題が発生してから対処する「対症療法」ではなく、問題を未然に防ぐ「予防」の視点です。
対策①:工事着手前の専門家による建物調査・診断
最も確実で効果的な対策は、原状回復工事に着手する前に、専門家による建物調査・診断を実施することです。
事前に「アスベストの有無」や「耐火被覆の現状」を正確に把握することで、必要な工事の全体像が明確になります。これにより、精度の高い見積もりと工期を設定でき、後から「知らなかった」という事態を防ぐことができます。これは、トラブルを回避し、事業計画を安定させるための最も賢明な投資と言えるでしょう。
》アスベスト事前調査をしないとどうなる?違反時の罰則から実例・不要なケースまで徹底解説
対策②:適切な専門工事業者の選定ポイント
調査・診断の重要性を理解したら、次は信頼できるパートナー(工事業者)を選ぶことが重要です。業者選定の際には、価格だけで判断するのではなく、いくつかの重要なポイントを確認しましょう。
まず、耐火被覆やアスベストに関する専門的な工事実績が豊富であること。加えて、石綿作業主任者などの専門資格を持つ技術者が在籍しているかは、その業者の技術力と信頼性を測る上で不可欠な指標です。
そして、中でも特に重要なのが、調査からアスベスト除去、その後の耐火被覆の復旧工事までを一貫して対応できる「ワンストップ対応」が可能かどうかです。調査、除去、復旧をそれぞれ別の業者に依頼すると、連絡の手間や時間、中間マージンといった余計なコストが発生しがちです。全てを一社で完結できる専門業者であれば、責任の所在が明確になり、スムーズでコスト効率の良い工事が実現します。
■まとめ

本記事では、テナントの原状回復で発生しがちなトラブルと、その背景に潜む「耐火被覆の劣化・損傷」や「アスベスト」といった専門的なリスクについて解説しました。
目に見える部分の修繕だけでなく、建物の安全性や法的要件に関わるこれらの潜在的リスクを事前に把握し、計画的に対処することが、予期せぬ費用の発生や工期の遅延を防ぐ鍵となります。
テナントの円滑な入れ替えと、大切な建物の資産価値を長期的に維持・向上させるためには、問題が発生してから対処するのではなく、信頼できる専門家による事前の調査・診断に基づいた、適切な原状回復工事を行うことが極めて重要です。
■原状回復に伴う耐火被覆工事は、株式会社實川耐工にお任せください。

ここまで解説してきたように、テナントの原状回復には、目に見えない専門的なリスク管理が不可欠です。
株式会社實川耐工は、長年にわたり耐火被覆工事とアスベスト対策工事を手掛けてきた専門家集団です。有資格者による的確な事前調査から、法令を遵守した安全な施工、そして各種行政への報告まで、すべてのプロセスをワンストップでサポートいたします。
もちろん、経年劣化した耐火被覆材の改修工事にも対応可能です。施工後のメンテナンスまで責任を持って担当いたします。
「うちのビルは大丈夫だろうか」「見積もりに耐火被覆補修とあるが、妥当なのか」「アスベスト調査から相談したい」など、どんな些細なことでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。
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